- キャンピングカーで撮り鉄旅する8大メリット
- 氷見線・黒部峡谷鉄道・のと鉄道・伯備線・山陰本線・芸備線・因美線7路線の絶景スポット
- 撮影機材・テクニック早見表で必携ギアをチェック
- 撮影マナーと安全チェックリスト10カ条
氷見線・黒部峡谷鉄道・のと鉄道・伯備線・山陰本線・芸備線・因美線を巡る
1. はじめに ─ キャンピングカーは“動く撮影基地”
撮り鉄旅で何より悩ましいのが「日の出前に現地入りしたい」「夕焼けまで粘りたい」「機材を安全に置いておきたい」といった時間・荷物・休憩の問題です。そこで頼れる相棒がキャンピングカー。
キャンピングカー撮影のメリット
北陸・中国地方は山海のダイナミックな景観が列車を引き立て、しかも広域にスポットが点在。キャンピングカーなら効率よく“ハシゴ”できます。
2. 北陸エリア
2-1. 氷見線 ─ 富山湾の鏡面に浮かぶ立山連峰
富山湾の蒼と立山連峰の白が溶け合う雨晴海岸。潮騒を切る二両編成は“海越しアルプス”という唯一無二の舞台装置の主役だ。日の出直後に鏡面の水面へ列車と山影が並ぶ奇跡を狙うなら、道の駅雨晴で前泊したキャンピングカーが最適。夏は入道雲、冬は雪嶺と蒼海のコントラスト、夕暮れの黄金光まで一日で収穫できる。

ハイライト 越中国分〜雨晴の海岸区間。夜明け直後は無風率が高く、水面が鏡のように。3000m級の立山連峰と列車が一枚に収まる奇跡的構図。

撮影TIP 標準〜中望遠(70-200㎜)で波打ち際ギリギリを狙う。海面反射を生かすならPLフィルター必携。
立ち寄り 道の駅雨晴で海鮮丼朝食 → 氷見温泉郷で朝風呂。
車中泊ポイント 道の駅雨晴・雨晴海岸駐車場。24時間トイレ完備。
2-2. 黒部峡谷鉄道 ─ “赤い橋”と深緑・紅葉のコントラスト
北アルプスの岩壁が迫る深い谷を、赤いトロッコ列車が喘ぎながら進む。深緑と紅葉が彩る後曳橋・新山彦橋は自然と鉄路が織り成す立体絵巻。宇奈月温泉RVパークを拠点に夜明け前の展望台へ上がれば、霧と橋梁を一望できる。窓のない客車に機材を抱え乗車しロケハン、撮って湯に浸かり、車内で装備を乾かす山旅が待つ。

ハイライト 後曳橋・新山彦橋を見下ろすやまびこ展望台。トロッコ列車+V字谷+エメラルドグリーンの川。
撮影TIP 超望遠(300-500㎜)で圧縮効果を狙うか、広角で谷の奥行きを強調。午前は順光。
立ち寄り 宇奈月温泉で外湯めぐり、欅平でトレッキング。
キャンピングカーメリット 宇奈月温泉駅前の立体Pは高さ制限あり。駅裏の臨時駐車場を利用すると安心。
2-3. のと鉄道 ─ “能登さくら駅”の桃源郷
七尾湾を見下ろす高台を走るローカル線。春、能登鹿島駅には百本の桜が桃色のトンネルを作り、海と漁火を背景にディーゼルが滑り込む。夜はライトアップ、朝は水面が霞むため昼夜連続で色温度の違う桜列車を収穫可能。里山里海号の展望車で棚田を下見し、海鮮朝市で補給したら再びシャッターへ──前泊キャンピングカーならではの贅沢だ。

ハイライト 能登鹿島駅の桜トンネル。陽が差し込む早朝とライトアップの夜で二度おいしい。

撮影TIP 広角+ローアングルでホーム屋根を額縁に。桜吹雪を写したい場合はシャッタースピード1/125前後で流す。
立ち寄り 七尾湾沿いの牡蠣小屋、能登ワイン直売所。
車中泊ポイント 道の駅能登さくら駅(駅併設)で車中泊可。
3. 中国エリア
3-1. 伯備線 ─ 高梁川を縫う“やくも”と貨物列車
高梁川のエメラルドを縫う伯備線。第3・第7橋梁の鉄骨美、山肌を走るSカーブ、朝霧に浮かぶ集落――名所が20km圏内に凝縮する。県道沿いの撮影地をキャンピングカーでラン&ガン、昼の特急、夕暮れの貨物、星降る深夜まで一気撮り可能。温泉スタンドで湯を補給すれば車内が移動サロン、ジビエ飯で腹を満たし次の橋へ。

ハイライト
- 第3高梁川橋梁:カーブ鉄橋+稲穂の田園。秋は彼岸花が彩る。
- 足立S字:紅葉の山肌を縫うSカーブ。薄曇りがコントラスト◎。 撮影TIP 70-300㎜が万能。川面反射は水量次第なので雨の翌日が狙い目。 立ち寄り 吹屋ふるさと村のベンガラ色町並み、道の駅醍醐の里のジビエバーガー。 キャンピングカー注意 県道は離合困難な区間あり。新見IC側からアクセスを推奨。

3-2. 山陰本線 ─ 日本海と大山が織りなすスケール感
紺碧の日本海と伯耆大山の雄姿が同居する山陰本線。惣郷川橋梁では夕陽が線路を炎色に染め、日野川橋梁では白雪の大山が背景に鎮座。朝夕二度のゴールデンタイムを逃さぬようキャンピングカーで時差行動を。冬の荒波と細雪、夏の群青と入道雲――同じ橋でも四季の表情は別世界。夜は漁火が列車を照らす幻想のブルーモーメントも狙える

夕陽と列車シルエットが「映える」鉄道橋。車は国道191号の海岸駐車帯へ。

大山バックの定番。河川敷は風が強いので三脚フックにウェイトを。
立ち寄り 須佐名物「イカ墨カレー」、米子の皆生温泉。
3-3. 芸備線 ─ 御衣黄桜と赤瓦駅舎のノスタルジー
中国山地の里山を縫う芸備線は時速50kmのゆったりした鼓動。赤瓦の木造駅舎と菜の花、矢神駅の御衣黄桜が淡緑から桃色へ変わる春は必見。無人駅にキャンピングカーの室内灯が小さな基地を作り、早朝霧の透過光で桜と列車をシルエットに。昼は駅前そばで一息、夕方は一両編成を棚田へ追い、緩やかな時間を写真に封じ込める。

ハイライト 矢神駅。4月中旬〜GW頃、薄緑→黄色→桃色へ変わる御衣黄桜とキハ120が共演。

撮影TIP 85㎜前後の中望遠で花びらを前ボケに。午後の順光がベスト。
立ち寄り 新見市神郷温泉で山郷ランチ。
3-4. 因美線 ─ 石造り“松ぼうき橋梁”と新緑の渓谷
岡山・鳥取県境を蛇行する因美線は秘境駅と石造り橋梁の宝庫。松ぼうき橋梁の円形橋脚と新緑の渓谷を国鉄色キハ120が駆ける姿は、静寂を破るワンシーン。灯りのない河原でキャンピングカー泊をすれば、星空と川音の中で夜明けの薄霧・山影・列車を一画面に収められる。秋は稲穂、冬は雪化粧と、同じ橋が季節ごとに新たな物語を語る。

ハイライト 橋脚の石張りと新緑が作る陰影美。5月上旬、朝の斜光が橋脚を立体的に浮かび上がらせる。

撮影TIP 24-70㎜広角寄りで渓谷を包み込む。ドローン撮影は鉄道会社の許可を必ず取得。
立ち寄り 智頭の杉だる天然水、智頭宿の古民家カフェ。
車中泊ポイント 道の駅あわくらんどは温泉併設、夜撮影後の疲れを癒やせる。
Q1. キャンピングカーで撮り鉄旅をするメリットは何ですか?
A1. 夜明け前の水鏡狙い、朝霧や夕陽タイムに自由に移動でき、車内でRAW現像や機材乾燥・風雨回避が可能。絶景そばでゆったり休憩しながら撮影に集中できます。
Q2. 北陸・中国地方のおすすめ撮影スポットは?
A2. 氷見線の富山湾水鏡、黒部峡谷鉄道の赤い橋×深緑、のと鉄道の桜トンネル、伯備線の高梁川鉄橋、山陰本線の日本海夕景、芸備線の御衣黄桜×赤瓦駅舎、因美線の松ぼうき橋梁新緑など7路線が狙い目です。
Q3. 撮影機材・セッティングで重要なアイテムは?
A3. 広角~中望遠~超望遠レンズ、カーボン三脚&ミニ三脚、一脚、ドローン(249g級)+NDフィルター、USB充電式LEDバー、ロープ&脚立を必携。Sun SurveyorやWindyで光線・朝霧を事前シミュレートしましょう。
Q4. 撮影マナーと安全チェックリストで気をつけるべきポイントは?
A4. 線路から2m以上離れる、私有地無断立入禁止、道の駅・指定駐車帯を利用、ゴミは必ず持ち帰り、列車運行情報確認など鉄則10カ条を遵守してください。
4. 撮影機材・テクニック早見表
シーン | レンズ | 補助機材 | ワンポイント |
---|---|---|---|
俯瞰(宮崎城跡・倶利伽羅峠) | 200-600㎜ | カーボン三脚+ギア雲台 | 画面端のケラレ確認 |
橋梁+列車(惣郷川・日野川) | 70-300㎜ | ND8-16フィルター | 波や川面を流してドラマ性UP |
花・桜(能登鹿島・矢神) | 24-70㎜ | レフ板 or LEDライト | 花を透過光で輝かせる |
夜桜ライトアップ | 35㎜F1.4単焦点 | 高ISO+手ブレ補正 | 露出は+0.3で白飛び防止 |
5. 撮影マナーと安全チェックリスト
- 線路からは絶対2m以上離れる。脚立使用時も同様。
- 私有地・農地への無断立ち入り禁止。撮影許可を得る/公道から撮る。
- 駐車エリア確認:道の駅・指定駐車帯以外は迷惑駐車NG。
- あいさつ&ゴミゼロ:地元の方に笑顔で一声、ゴミは持ち帰る。
- 列車運行情報の確認:ダイヤ乱れ時は線路際に近寄らない。
6. まとめ ─ キャンピングカーで“時間も絶景も独り占め”
北陸の海越し立山、秘境トロッコ、桜トンネル――。中国山地の渓谷美、夕陽に染まる海橋、希少桜、石造り橋梁。これら7路線は、どれも「早朝・夕方が命」。公共交通+宿探しでは時間と体力をロスしますが、キャンピングカーなら前夜に静かな道の駅へ入り、仮眠からそのまま撮影地点へ。一日の最後は車内でカードをバックアップし、地元の食材で簡単ディナー。
本稿を手に、ぜひキャンピングカーで“動く撮影基地”を走らせてください。北陸・中国地方の鉄道と大自然が奏でる一瞬のハーモニー――それを丸ごと切り取れるのは、自由に移動し、自由に滞在できるキャンピングカー撮り鉄だけの特権です。撮影マナーを守りつつ、あなただけの一枚を。さあ、エンジンをかけて、次の絶景へ。
