秋の東北は、日本屈指の紅葉スポットが点在する宝石箱のような地域です。2025年の紅葉は平年並みかやや遅めの予想で、10月上旬の高地から11月上旬の平野部まで、長い期間にわたって楽しめます。この広大なエリアを自由に巡るなら、キャンピングカーほど理想的な手段はありません。時間に縛られず、絶景の前で目覚め、満天の星の下で眠る。そんな贅沢な体験が、東北の秋にはあります。
東北紅葉前線 2025年予測
東北地方の紅葉は、標高の高い山々から始まり、徐々に里へと下りてきます。9月下旬に八甲田山や八幡平で幕を開け、11月中旬まで約2ヶ月間、6県各地で見頃がリレーのように続きます。このチャートは各県の一般的な見頃のピークを示しており、旅の計画にお役立てください。
キャンピングカー旅のヒント
🚐 道の駅を拠点に
東北には温泉併設や景観の良い道の駅が豊富。車中泊の拠点として最適です。事前に利用ルールを確認しましょう。
🛣️ 山岳路の運転
紅葉名所は山間部に多く、道幅が狭い場所も。日の入りが早いので、早めの行動が安全です。凍結の可能性も考慮を。
🌡️ 寒暖差対策
昼は暖かくても朝晩は氷点下になることも。フリースやダウンなど、重ね着できる服装と、冬用の寝袋を準備しましょう。
🐻 野生動物との遭遇
特に熊の活動が活発な時期です。単独での早朝・夕方の行動は避け、熊鈴やラジオを携帯するなどの対策を忘れずに。
【青森】八甲田・奥入瀬~渓流と原生林が織りなす錦の世界
東北紅葉巡りの出発点は青森県。標高1,300m級の八甲田山では、9月下旬から色づきが始まり、10月上旬には燃えるような紅葉の絨毯が広がります。ロープウェーで空中散歩を楽しめば、ブナやカエデ、ダケカンバが織りなす壮大なパノラマに圧倒されるでしょう。

八甲田観光の後は、全長約14kmの奥入瀬渓流へ。清流沿いに続く遊歩道は、ブナやトチノキの巨木林がトンネル状に色づき、数多の滝と相まって幻想的な景観を作り出します。キャンピングカーなら、早朝の澄んだ空気の中、朝霧に包まれた渓流美を独り占めできます。

さらに足を延ばしたいのが蔦沼。朝焼けの時間帯、水面に紅葉が鏡のように映り込む「真紅のリフレクション」は、一生に一度は見たい絶景です。キャンピングカー泊なら、夜明け前から最高の撮影ポジションで待機できるという特権を享受できます。

周辺には酸ヶ湯温泉や蔦温泉といった秘湯が点在。露天風呂から紅葉を眺めながらの湯浴みは、撮影で冷えた体を芯から温めてくれます。お土産には、青森県産リンゴ丸ごと1個をパイで包んだ「気になるリンゴ」がおすすめです。

【岩手】八幡平・雫石~雲海と星空に抱かれる至高の拠点
岩手県は、キャンピングカー旅の真価が発揮されるエリアです。特に注目すべきは、JRVA認定の「RVパーク岩手山」。舗装された平坦な駐車スペース、24時間利用可能なトイレ、電源サイトと、キャンピングカー利用者が求める全てが揃った理想的な拠点です。
この拠点から10分ほどで到着する雫石スキー場では、紅葉シーズンに特別なロープウェー運行が実施されます。日没後や早朝の特別便に乗れば、夕景や雲海を上空から堪能できる贅沢な体験が待っています。ホテル宿泊では実現困難な、夜間や早朝のイベント参加も、RVパーク泊なら安全かつ快適に実現できます。
標高約1,600mの八幡平アスピーテラインでは、ミネカエデ、ダケカンバ、ナナカマドが織りなす紅葉のグラデーションが壮観です。見返峠からは、眼下に雲海と紅葉谷を望む絶景に出会えることも。運が良ければ、特別天然記念物のニホンカモシカが道路脇に佇む姿に遭遇するかもしれません。

夜になれば、街明かりから離れたRVパークは星空観察の絶好のスポットに変貌します。肉眼でもはっきりと見える天の川、流れる流星、満天の星々。標高の高い場所で、暖かいRV内から星空を眺める贅沢は、キャンピングカー旅ならではの特権です。
続いて北上川支流の砂鉄川が創る猊鼻渓へ。両岸に高さ100m近い石灰岩の絶壁が迫る約2kmの渓谷を、手漕ぎ舟でゆったりと進みます。10月下旬から11月上旬、カエデやウルシ、ナナカマドが水面に映り込み、船頭さんの「げいび追分」の歌声とともに幻想的な景観を堪能できます。エメラルドグリーンの水と紅葉のコントラストは、東北随一の渓谷美として記憶に残るでしょう。

岩手・宮城・秋田にまたがる栗駒山は、「神の絨毯」と称えられる紅葉の名所。東麓の須川高原から望む錦に彩られた山裾の広がりは絶景です。標高1,626mの山頂付近から色づき始め、9月下旬から10月上旬に山頂がピーク、中腹から麓は10月中旬まで楽しめます。ウラジロモミやナナカマド、カエデ類、ブナが高度差でグラデーションを生み、赤・橙・黄・緑のモザイク模様が一望できます。

須川温泉は標高1,120mにある高原の湯治宿で、酸性硫黄泉が名物。青空の下、紅葉に囲まれた露天風呂「仙人岩浴場」は開放感抜群で、登山客の疲れを癒やします。お土産には、黄身餡をカステラ生地とホワイトチョコで包んだ岩手名物「かもめの玉子」や、南部煎餅をどうぞ。
【宮城】鳴子峡と秋保~渓谷美と名瀑に魅せられて
宮城県を代表する紅葉名所・鳴子峡は、深さ100mのV字峡谷が約2.5kmにわたり続く絶景スポット。ブナ、カエデ、ナラ、ウルシが作り出す多彩なパッチワークは圧巻です。見頃は10月下旬から11月上旬。大深沢橋と紅葉群のコントラストは、撮影必須の構図です。


撮影後は鳴子温泉郷へ。5つの温泉地それぞれに特色ある湯が揃う「泉質のデパート」として知られ、硫黄泉、食塩泉、硫酸塩泉など、好みに応じて選べます。無料の足湯も多数整備され、散策途中の休憩に最適です。

仙台の奥座敷・秋保温泉郷周辺も見逃せません。日本三名瀑の一つ秋保大滝は、落差55mの雄大な姿がカエデやウルシに彩られた渓谷の中で轟音とともに流れ落ちます。10月下旬から11月上旬の見頃には、滝見台からの眺望が圧巻。遊歩道で滝壺近くまで降りれば、マイナスイオンたっぷりの空間で紅葉と水しぶきを体感できます。

秋保温泉街近くの磊々峡は、名取川が作った奇岩の渓谷。長さ1kmほどの遊歩道沿いにモミジが連なり、川面に映る紅葉とエメラルドグリーンの流れが美しい隠れた名所です。温泉と紅葉を同時に楽しめる秋保エリアは、キャンピングカー旅の癒しスポットとして最適です。

標高1,600m付近まで車で登れる蔵王エコーラインでは、標高に応じて移り変わる紅葉を楽しめます。火口湖「御釜」のエメラルドグリーンと周囲の紅葉が織りなす色彩コントラストは蔵王ならではの光景。晴天時、キャンピングカーで山頂付近に滞在すれば、夕暮れから星空まで、刻々と変化する絶景を独占できます。

【秋田】抱返り渓谷・小安峡~湯けむりと紅葉幻想世界
「みちのくの耶馬渓」と称される抱返り渓谷は、玉川沿い約10kmにわたる景勝地。エメラルドグリーンの淵とカエデ・ウルシの紅葉がコントラストを成す光景は、思わず振り返りたくなる美しさです。回顧の滝周辺が絶景ポイントで、10月中旬から下旬が見頃となります。

渓谷周辺の森にはニホンザルの群れが生息しており、秋には木の実を求めて川辺に現れることも。野生動物との静かな出会いも、キャンピングカー旅の醍醐味の一つです。
秋田南部を代表する小安峡は、皆瀬川が作った深さ60mの峡谷。10月下旬から11月上旬、断崖の岩間から100℃の噴気がもうもうと噴き出す大噴湯と、ブナやモミジが渓谷を覆う光景が織りなす幻想的な風景は一見の価値あり。谷底へ降りる階段道の途中、橋から眺める紅葉と白い噴気のコラボレーションは迫力満点です。

近くの泥湯温泉・川原毛温泉では天然の露天風呂が楽しめます。特に川原毛大湯滝は、落差20mの温泉滝そのものが露天風呂になっており、紅葉時期は温かい滝に打たれながら周囲の紅葉を眺める贅沢体験が可能です。
近隣の乳頭温泉郷は必訪スポット。鶴の湯をはじめとする茅葺き屋根の湯治宿が点在し、ブナ林に囲まれた露天風呂で紅葉を楽しめます。浴槽の底から源泉が湧く蔦温泉は、大正時代の木造本館を残す一軒宿として風情満点です。
秋田土産は「金萬」や「生もろこし」といった伝統銘菓がおすすめ。素朴な甘さが、山間部での疲れを優しく癒してくれます。
【山形】山寺と蔵王~歴史と自然が交差する風雅の地
松尾芭蕉の句で知られる山寺(立石寺)では、約1,000段の石段の両側にモミジやウルシが色づき、苔むした岩肌とのコントラストが幽玄の世界を作り出します。10月下旬から11月上旬の見頃には、寺領全体が赤や黄に包まれます。中腹の五大堂から眼下に見下ろす山寺集落と紅葉のパノラマは圧巻です。

西吾妻スカイバレーは、山形と福島を結ぶ絶景道路。標高1,400mの白布峠からは、ナナカマドの真紅とブナの黄色が広がり、眼下には磐梯山と桧原湖の眺望が得られます。10月中旬が見頃で、高原ドライブの醍醐味を存分に味わえます。

銀山温泉の大正ロマン溢れる木造旅館街や、蔵王温泉の乳白色の硫黄泉など、温泉の選択肢も豊富。お土産には、山形名産の梅を寒天で固めた「乃し梅」や、「古鏡」といった伝統菓子が喜ばれます。
【福島】磐梯高原・安達太良山で星空と紅葉の競演
東北紅葉巡りのフィナーレを飾るのは、福島県の磐梯高原エリア。ここには「磐梯高原・絶景の猪苗代スキー場RVパーク」という、磐梯朝日国立公園内に位置する理想的な拠点があります。国立公園内という立地は、周辺の光害が極めて少ないことを意味し、東北地方における天体観測の最高峰スポットとして機能します。

大小30余の沼が連なる五色沼自然探勝路では、エメラルドグリーンやコバルトブルーに輝く湖沼と紅葉の組み合わせが幻想的。10月中旬から下旬の見頃には、モミジやドウダンツツジが湖面に映り込み、裏磐梯ならではの光景を作り出します。

高村光太郎の詩「智恵子抄」で「ほんとの空」があると謳われた安達太良山も必見です。山麓の岳温泉からロープウェイで薬師岳まで一気に登れば、標高1,350m付近からの紅葉パノラマが広がります。10月中旬が見頃で、山頂付近はウラジロモミやナナカマドの赤、中腹はブナやカエデの黄が鮮やか。ロープウェイ山頂駅から徒歩10分の展望台「牛の背」からは、紅葉谷越しに噴煙立ちのぼる安達太良の火口丘を望む絶景ポイントです。


標高1,600m付近の浄土平では、高山植物の草紅葉が一面橙色に染まる中、周囲の山肌にナナカマドやダケカンバの赤黄が散りばめられます。吾妻小富士の火口壁を一周すれば、眼下に紅葉谷と遠く安達太良連峰まで望めます。
そして夜。国立公園内のRVパークは、光害ゼロの環境で満天の星空を提供してくれます。2025年10月下旬の新月期に滞在すれば、天の川、流星、深宇宙の星々を、暖かいキャンピングカー内から、あるいは屋外で寝袋に包まれながら堪能できます。標高の高さと周辺の暗さが、まさに「手が届きそうな星空」を実現するのです。
高湯温泉の硫黄泉で温まり、福島銘菓「ままどおる」のミルク風味の優しい甘さで旅の疲れを癒す。そんな至福のひとときが、東北紅葉巡りの締めくくりにふさわしい余韻を残してくれます。
6県の特選紅葉撮影スポット
青森県:奥入瀬渓流
十和田湖から焼山まで約14km続く渓流。千変万化の水の流れと、カエデやブナが織りなす錦秋のトンネルは圧巻です。遊歩道が整備されており、気軽に散策できます。
旅の寄り道
温泉:蔦温泉、酸ヶ湯温泉
和菓子:りんごを使ったアップルパイ
星空:十和田湖畔は絶好の観測地
岩手県:八幡平
東北で最も早く紅葉が始まる場所の一つ。広大な湿原が黄金色に染まる「草紅葉」と、ダケカンバの白、ナナカマドの赤が美しいコントラストを描きます。
旅の寄り道
温泉:藤七温泉、松川温泉
和菓子:南部せんべい
夕日:八幡平アスピーテラインからの夕景
秋田県:抱返り渓谷
「東北の耶馬渓」と称される景勝地。エメラルドグリーンの渓流と、両岸に迫る原生林の紅葉が見事。特に「回顧の滝」周辺は人気の撮影スポットです。
旅の寄り道
温泉:乳頭温泉郷、田沢湖高原温泉
和菓子:もろこし
体験:角館武家屋敷の紅葉散策
宮城県:鳴子峡
大谷川が刻んだ深さ100mの大峡谷。奇岩が連なる断崖を、赤や黄色の木々が彩ります。鳴子峡レストハウスからの眺めは、まさに絵画のような美しさです。
旅の寄り道
温泉:鳴子温泉郷
和菓子:ゆべし、ずんだ餅
列車:紅葉の峡谷を渡る陸羽東線
山形県:山寺 (立石寺)
松尾芭蕉の句で知られる霊場。1015段の石段を登りながら、谷間を埋め尽くす紅葉と歴史的な建造物の調和を楽しめます。五大堂からの眺望は必見です。
旅の寄り道
温泉:天童温泉、かみのやま温泉
和菓子:力こんにゃく、のし梅
体験:紅葉ライトアップ(要確認)
福島県:五色沼湖沼群
磐梯山の噴火で生まれた神秘的な湖沼群。水の色が沼によってエメラルドやコバルトブルーに変化し、紅葉とのコントラストは息をのむ美しさです。
旅の寄り道
温泉:裏磐梯温泉、五色沼温泉
和菓子:ままどおる、ゆべし
星空:磐梯吾妻スカイライン浄土平
🍁 東北秋の紅葉キャンピングカー旅 よくある質問
まとめ~キャンピングカーが叶える、自由で豊かな東北の秋
東北6県の紅葉を巡る旅は、キャンピングカーという移動手段によって、その価値が何倍にも高まります。認定RVパークという安全で快適な拠点を確保しながら、早朝の雲海、夕暮れの絶景、深夜の星空観察といった、時間限定の体験を逃すことなく堪能できる。これこそがキャンピングカー旅の最大の魅力です。
2025年の東北の秋は、10月上旬の高地から11月上旬の平野部まで、長期間にわたって楽しめる見込みです。青森から始まり、岩手、宮城、秋田、山形、福島と南下しながら、各地の紅葉のピークを追いかける。その道中で出会う温泉、郷土菓子、野生動物、そして地域の人々の温かさが、旅をさらに豊かなものにしてくれるでしょう。
紅葉、温泉、星空、そして自由。東北の秋をキャンピングカーで巡る旅は、日本の秋の美しさを五感で味わい尽くす、最高の贅沢なのです。


